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EV開発ストーリー

技術の進歩とEVの進化

電気自動車の技術の進歩を御堀さんに聞いてみよう

モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員御堀直嗣

プロフィール

1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科卒。専攻は流体工学84年よりフリーランスライターになり、さまざまな雑誌等で執筆活動を展開。長年の自動車に関する経験をもとに、自動車関連の著作も多数ある。

技術の進歩とEVの進化※EV=Electric Vehicle(電気自動車)

“EV元年”

2009年は、夏に軽自動車のEVが市販される予定ということで、EV元年といわれています。2010年以降には、他の自動車メーカーからも小型EVが登場する予定です。

過去にも、EVが注目を集め、一部にリースの形式で提供されたこともありましたが、今日ほど消費者からの期待を集めてEVが市販に移されるのは、はじめてではないでしょうか。

これほどの期待が、多くの人々に広がった背景には、自動車メーカーや電池メーカーがEV開発に奮闘してきた歴史があってのことです。とくに、90年代初頭にあったEV開発競争が、今日に至る最新のモーターやバッテリー技術の基盤となったと考えられます。

モーターでは、永久磁石式同期モーターが生まれ、バッテリーでは、リチウムイオンバッテリーが生まれました。この二つの技術が、EVの性能を発展させたのです。

どのように発展させたかといいますと、永久磁石式同期モーターは、モーターの小型高性能を実現し、それによって、軽自動車でも十分な加速性能を得ることができました。同時に、客室や荷室の空間を犠牲にせずに済むようにもなりました。リチウムイオンバッテリーも、小型高性能であることが、少ないバッテリーで長い距離を走行し続けるということを実現しました。

つまり、日常生活の足として欠かせない軽自動車の特性が、EVでも十分満たせるまでに、モーターとバッテリーの小型高性能化が可能となったのです。

“日本の技術が、EV元年を支えています”

その、永久磁石式同期モーターと、リチウムイオンバッテリーという、EVの鍵を握る技術を進歩させたのは、実は日本人なのです。

永久磁石式同期モーターの原理自体は、以前からあるものですが、永久磁石の磁力を強力にする希土類という元素を使った磁石をモーターに使うことで、小型高性能化をもたらしたのは、日本人です。

希土類の中でも最強といわれるネオジムと鉄とホウ素をあわせたネオジム磁石(Nd2Fe14B)は、住友特殊金属(NEOMAX)の佐川眞人博士によって1982年に発明されました。そしてこの磁石を使ったモーター制御を確立したのも日本の技術です。

今日の日本の自動車メーカーが製造または研究開発中のEVや燃料電池自動車(FCV)のモーターは、すべて永久磁石式同期モーターとなっています。

リチウムイオンバッテリーも、原理自体は以前からありましたが、今日のように安全に使えるように実用化への道筋をつけたのは日本人の力です。

発火などの危険を伴った金属リチウムに替わり、電気を通すプラスチックのポリアセチレンを発見したのは、2000年にノーベル化学賞を受賞した筑波大学名誉教授の白川英樹博士です。これに注目した旭化成フェローの吉野彰氏、小野晃氏が、負極にポリアセチレン、正極にコバルト酸リチウムを使ったリチウムイオンバッテリーを発明しました。

そして、90年代に、旭化成とソニーからリチウムイオンバテリーが発売されました。

その後、自動車メーカーの研究が加わり、今日のEVで使われるマンガン酸リチウムを正極に使うことで、材料コストを下げるとともに、より発火のしにくい安全なリチウムイオンバッテリーができあがりました。

日本の科学者の発明と日本のメーカーの開発力によって、EVは飛躍的に進歩し、EV元年といわれる今日を迎えることになったのです。

(内容は御堀氏のインタビューに基づいております。)