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白馬EV・PHVワンダーランド2014 ワークショップ 「EV・PHVを利用する観光と観光地域の活性化を考える」

白馬村にて開催された「白馬EV・PHVワンダーランド2014 ワークショップ」の概要をご紹介いたします。

2014年9月7日(日)、明け方までの雨が見事に止んで晴れわたった白馬村では、EVラリーなどが行われたHakuba47から会場をウィング21に移して、「白馬EV・PHVワンダーランド2014 ワークショップ」を開催しました。 「EV・PHVを利用する観光と観光地域の活性化を考える」というテーマに沿って、午前の部では、観光地の活性化に欠かせない充電インフラの整備事業、各自動車メーカーや観光地、EVモビリティ社会が目指すもの、そして地元白馬や、世界遺産の登録から20年を経た屋久島の観光と環境への取組みが報告されました。

午前の基調講演では、北海道大学の小林先生に「観光とは何か」を再定義し、活力を生み出す鍵は環境にあることを、世界の先進的な観光地を例にご紹介いただきました。

午後の部では、スイス・ツェルマットよりお越しいただいた山田桂一郎氏と地元白馬出身の上村愛子氏の対談によって、新たな観光地のありかたを再発見するトークが展開されました。ワークショップの最後には、スイス、白馬、屋久島、EVユーザー代表のそれぞれの視点から、観光地の将来に光を当てる貴重なご意見が数多く飛び出し、この日をきっかけに新たな取組みが始まることが期待され閉会しました。

また、ワークショップ開催と同時に、Hakuba47会場では国内外のEV・PHV体験試乗会が多いに賑わいました。やはり、「EVは乗ってみなきゃ、わからない!」

【ワークショップ来場者数】130名(登壇者、関係者,、メディアを含む)

テーマ

EV・PHVを利用する観光と観光地域の活性化を考える

講演の様子
午前の部

■9:05?9:15 次世代自動車インフラ整備促進事業 ?EV・PHV普及に向けた充電インフラ整備?

石山武[資料]PDF
一般社団法人次世代自動車振興センター
理事兼事務局長
「地球温暖化対策に向けたCO2の削減は、観光地においても必要であり、そのためのEV・PHVの充電インフラの整備が欠かせません。ガソリンスタンドは全国に3万カ所以上あり、一方で日本の急速充電のインフラは、北米や欧州よりも多く2000箇所以上に達しましたが、まだまだ十分ではありません。次世代自動車振興センターでは、車両購入の補助、充電インフラの整備のための補助、そして水素ステーション整備のための補助という3つの補助金交付事業を中心に行っています。」「乗ってみなきゃ、わからない!」を合言葉に開催しているEV・PHV体験試乗会等とともに、さらなるインフラ整備推進の必要性が報告されました。

■9:15?10:15 各自動車メーカーの取組み

中井久志[資料]PDF
環境省 水・大気環境局 自動車環境対策課
門田英稔[資料]PDF
日産自動車株式会社 日産リーフ 車両開発主管
岩田和之[資料]PDF
本田技研工業株式会社 スマートコミュニティ企画室 主任技師
百瀬信夫[資料]PDF
三菱自動車工業株式会社 電動車両事業本部 副本部長 兼 商品戦略本部 本部長補佐
1873年、電気自動車は、ガソリン自動車よりも10年以上も早く発明されました。自動車がこれまで実現してきたことは何か。そして、これからのサステイナブルなモビリティ社会を支えていくには、何が必要か。次世代自動車は、電気と水素を活用し、様々なエネルギー源を利用し、使用目的によって棲み分けが進むことが提唱されました。


中井久志 トヨタ自動車株式会社


門田英稔 日産自動車株式会社


岩田和之 本田技研工業株式会社


百瀬信夫 三菱自動車工業株式会社

■10:15~10:55 基調講演「環境がこれからの観光の鍵だ!」

小林英俊[資料]PDF
北海道大学大学院 客員教授(観光創造専攻)
北海道大学観光高等研究センター 客員教授
「そもそも観光とは何か。スイスは、いつから観光地になったのか。14?15世紀、人々は野生の自然には全く無関心で、スイスにいたっては“悪魔の住む怖いところ”とさえ思われていたといいます。ところが、18世紀後半になるとスイスの画家が山々の美しい風景を描くようになります。こうして野生の山々が、人々の見方や価値観の変化(文化的な行為)によって観光地へと変貌していったのでした。同じように見える日本の風景が、見る側の変化で新しい観光地に変わることができるわけです。」環境に負荷をかけない質の高い観光地は、スイスやオーストリアにお手本がある事、村や村人、自動車メーカーなど、観光地と民間企業との先進事例等の紹介には高い関心が寄せられました。

■11:05~11:30 白馬村のエネルギー・交通・暮らし

渡辺俊夫[資料]PDF
白馬EV推進協議会 会長
「白馬村にEV推進協議会が作られたのは3年前。村は東西に15.7km、南北に16.8kmの広さで、時速60kmで通るとわずか16分で過ぎてしまいます。1998年の長野冬季オリンピックでは、自然環境に配慮した取組みが国際的にも高い評価を得ましたが、農業と里山と山岳地帯に依存する村では新たな将来をどう描くかが課題です。現在、村の電気エネルギーは小水力発電やバイオマスなどによって100%自給されています。その自給エネルギーを活かすためにも、一人一台所有となる自動車のEV・PHVへの移行やシャトルバスなど公共交通のEV化が重要です」

■11:30~12:00 世界遺産 屋久島 CO2フリーを目指して ?電気自動車と屋久島の観光?

松本薫[資料]PDF
屋久島町 商工観光課長
「屋久島は、1993年に日本で初めて世界遺産に登録されてから20年が経ちました。訪れる観光客の数は、ピーク時の40万人(年間)から30万人に減って落ち着いていますが、これからの20年をどう描くかが課題です。島民は周囲の沿岸部で暮らしているため、クルマは潮風による塩害を恐れ、中古車を購入する習慣があります。保有台数は約1万台で、現在150台あまりが電気自動車。全国平均よりも高いEV普及率をさらに高める計画です。島の電力は、“水の島”の利点、水力を活かして、ほぼ100%自給。“CO2フリーの島づくり”を目指して、内外に広くアピールして行きます。」

午後の部

■12:45~13:15 スイス ツェルマットのエネルギー・交通・暮らし ?豊かなライフスタイルのために?

山田圭一郎[資料]PDF

スイス ツェルマット観光局 日本語インフォメーション担当
「ツェルマットは、4000m級のヨーロッパ・アルプス38座に囲まれた村で、人口は約5800人。この小さな山岳観光リゾートに、年間200万泊のお客様が世界中から訪れます。村内は燃焼燃料を使う車両は通行禁止で、観光客は荷物を馬車や荷車、電気自動車に移し替えて宿泊先まで移動します。しかも、そのEVはメーカー製ではなく手づくりのツェルマット製。電力は1893年から自前で発電を始め、現在自給率は100%。」こうした持続可能な社会を築く取組みは、観光が目的ではないことに驚きます。あくまでも、住民全体が自らの生活や哲学として、自主的に実行していること。日本の観光地の新たな指針となるレポートであったといえるでしょう。

■13:15~13:45 対談「ふたつの村に住んでみて」

山田圭一郎 & 上村愛子
(元女子モーグル日本代表選手)

ツェルマット在住の山田さんと、長いときでは一ヵ月あまりツェルマットでトレーニングをしていたという上村さん。上村さんが初めてこの村を訪れたのは10代の頃。「あ、(アルプスの少女)ハイジの世界に来たんだわ!」と感じたのを憶えているという。「白馬よりも、もっともっと山奥な印象で。昔からの暮らしを大事にしている印象でしたね」 スキーの練習には多くの道具が必要になるわけですが、「村の駅に着いたら、そこから小さな電気自動車に移し替えて運んでいたのが印象的でした」そう語る上村さんだが、「面倒くさくなかったですか?」と尋ねる山田さんへの答えが、この村の哲学が、訪れる外部の人々にも理解され、受け入れられていることを物語っている。

「ここは、そういう文化のある場所なんだなと思いました。」(上村さん)

ガソリン車やディーゼル車は村へは入れない、電気自動車に荷物を移す。そういう一見不便な行為を納得してもらう鍵はどこにあるのだろうか?山田さんは、それがここでの住民の暮らし方なんだと観光客などに感じてもらえるように、“住民自らの決意で実践すること”だと力説する。観光のため、お金のためと、訪れる人々に見破られない取組みと哲学が、ツェルマットの文化や価値となって伝わってくるからだろう。 観光地にとって、EVやエネルギーの自給は、あくまで手段であり、道具であり、目的ではないということに気づかされた対談であった。

■13:45~14:00 EV・PHVユーザーからの報告

舘内端[資料]PDF
日本EVクラブ代表 自動車評論家
「なぜ、舘内さんはEVをやっているの?」とよく聞かれるといいます。いままで正直に答えていなかったそうですが、今回初めて正直に話してくださいました。それは、「楽しいから」というだけ。今年で20周年を迎えた「日本EVクラブ」。その代表であり、EV・PHVユーザーの代表でもある同氏は、EVに楽しいという価値を見いだしていることになります。先の山田氏と上村氏の対談にも触れていました。ツェルマットに到着したときの印象を、「こういうところなんだー」と答える上村さんは、白馬村と比べて相当違う、イヤだなーと思ったのではなく受け入れてしまった。ここに世界有数の観光地としての奥深い魅力が潜んでいると力説されました。自作のEVスーパーセブンで、56日間、日本一周を成し遂げた旅は、訪ねた観光地や人々に“EVって楽しい”を伝えるのが目的だったのではないでしょうか。

■14:05~14:55 パネルディスカッション EV・PHVを利用する観光と観光地域の活性化を考える

○コーディネーター 小林英俊 北海道大学
○パネリスト 渡辺俊夫 白馬EV推進協議会
松本薫 屋久島町
山田桂一郎 JTIC.SWISS
舘内端 日本EVクラブ
「今回、EVユーザーの方々にお会いして感じた特徴は、EVは性能がこうだからこうしなくちゃいけない、というのではなく、そのまま自分のものとして受け入れて楽しんでいらっしゃること」そう語り始めたコーディネーターの小林氏。「EVの魅力は、自分で使う道具を自分で作れること。そういうバリューをもらいながら、その先にいまはこれだけの距離しか走れない。それを受け入れる自分を発見できる楽しさもある」と答える舘内氏。
「私たちは白馬の自然景観だけじゃなく、美味しい空気を吸っていただきたい。観光地だから、というだけじゃなく地元の人もそう信じて暮らしたい」そういうライフスタイルが大切なんじゃないでしょうか、と渡辺氏。ここに住んでみたい、そう思って住みつく人が多いのが屋久島。松本氏は「屋久島への観光客のためにエコはやりたくない、絆の強い集落単位で自分たちの環境にいいことを進めたい」と話す。
いままでの、より速く、より快適に、より遠くへ、という価値観が、いまの環境問題を生んだのは事実。だからEV・PHVは、私たちに新たな価値観を教えてくれる。そういえるのかもしれません。

プログラム

【午前】 9:00-12:00
挨拶 09:00
-09:05
白馬村長 下川 正剛
講演 次世代自動車インフラ整備促進事業-EV・PHV普及に向けた充電インフラ整備- 09:05
-09:15
一般社団法人次世代自動車振興センター
理事兼事務局長 石山 武
講演 各自動車メーカーの取組み 09:15
-09:30
トヨタ自動車株式会社
広報部 企画室 担当部長 中井 久志
講演 09:45
-10:00
日産自動車株式会社
日産リーフ 車両開発主管 門田 英稔
講演 10:00
-10:15
本田技研工業株式会社
スマートコミュニティ企画室
主任技師 岩田 和之
講演 10:00
-10:15
三菱自動車工業株式会社
電動車両事業本部 副本部長
兼 商品戦略本部本部長補佐
百瀬 信夫
基調講演 環境がこれからの観光の鍵だ! 10:15
-10:55
北海道大学大学院
客員教授(観光創造専攻)
北海道大学
観光学高等研究センター客員教授
小林 英俊
 休憩 10:55-11:05
講演 白馬村のエネルギー・交通・暮らし 11:05
-11:30
白馬EV推進協議会
会長 渡辺 俊夫
講演 世界遺産 屋久島 CO2フリーを目指して-電気自動車と屋久島の観光- 11:30
-12:00
屋久島町
商工観光課長 松本 薫
 昼休憩 12:00-12:45
【第二部・午後】 12:45~15:00
講演 スイス ツェルマットのエネルギー・交通・暮らし-豊かなライフスタイルのために- 12:45
-13:15
JTIC.SWISS代表
観光カリスマ・地域力創造アドバイザー(政府認定)
スイス ツェルマット観光局
日本語インフォメーション担当
山田 桂一郎
対談 二つの村に住んでみて 13:15
-13:45
JTIC.SWISS 山田 桂一郎
元女子モーグル日本代表 上村 愛子
講演 EV・PHVユーザーからの報告 13:45
-14:00
日本EVクラブ 代表 / 自動車評論家
舘内 端
パネルディスカッション EV・PHVを利用する観光と観光地域の活性化を考える 14:05
-14:55
コーディネーター
 北海道大学 小林 英俊

パネリスト
 白馬EV推進協議会 渡辺 俊夫
 屋久島町 松本 薫
 JTIC.SWISS 山田 桂一郎
 日本EVクラブ 舘内 端
挨拶   14:55
-15:00
経済産業省 自動車課
(併)電池・次世代技術・ITS推進室
課長補佐  鈴木 理大